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M&A(Mergers and Acquisitions)

取得条項付株式

M&A取引における取得条項付株式の潜在能力を探る

– M&Aにおける取得条項付株式の理解
– 取得条項付株式の仕組みと利点
– M&A取引における取得条項付株式の実例とケーススタディ

この取得条項付株式は、一定の事象が発生することで会社が強制的に取得できるようになる株式のことです。これを前もって企業の定款に定めておくと、強制的な株式取得ができるようになります。ではなぜ定款を変更してまでこのような取得条項付株式を設定するのでしょうか。その理由は投資ファンドなどによって仕掛けられる敵対的買収を阻止するという狙いがあるのです。企業では特定の会社にその株式を独占されると、企業の意に反してM&Aをされたり、勝手に会社売却を行われてしまう恐れがあります。ですから企業では当然、この取得条項付株式を設定し株式の買占めが行われたときには強制的にそれを取得できるようにしておきます。

M&Aにおける取得条項付株式の理解

– M&A取引における取得条項付株式とは、ターゲット企業の株主が一定の期間内に事前に定められた価格で株式を買収企業に売却する権利を持つ株式のことを指します。
– このオプションは、買収後の不利な結果に備えて株主に下降リスクの保護を提供し、リスクを緩和し価値を保全することを可能にします。
– 取得条項付株式は、M&A交渉や統合プロセス中に株主の信頼を醸成し、不確実性に対処するための戦略的ツールとして、ターゲット企業や買収企業にとって重要な役割を果たします。

取得条項付株式の仕組みと利点

– 取得条項付株式の仕組みは、ターゲット企業とその株主との間の契約上の合意により、Putオプションの条件が明記されます。
– 株主は、買収後の合併体の将来のパフォーマンスに不安を抱いたり、買収企業が提示した買収価格に疑問を抱いたりする場合に、Putオプションを行使する傾向があります。
– 取得条項付株式を提供することで、ターゲット企業は株主に追加の保証を提供し、買収に対する抵抗を最小限に抑えながら、潜在的な買収者を引き付けることができます。

敵対的買収を防ぐために有効

もし強制的に株式を取得した時には、相手会社に対価として現金・社債・新株予約権・現金などが与えれることになっています。特に日本では2000年代に入ると外資系投資ファンドによって国内企業の株式買い占めが行われるようになってきました。投資ファンドは株式取得比率の高さにものを言わせて、企業に自分たちへの配当を増やすように要求したり他社へのM&Aや会社売却を促すことをしてきました。こうなると投資ファンドにしか企業の利益が及ばないことになります。それで企業の他のステークホルダーを守るために敵対的買収を防ごうという流れが強まっているのです。今では取得条項付株式を定款に定めておくことで、経営者や社員、そして他の株主を保護できるという見方が多くなっています。

M&A取引における取得条項付株式の実例とケーススタディ

– 2016年にMicrosoftがLinkedInを買収した際、Microsoftは買収取引の一環として、LinkedInの株主に取得条項付株式を提供しました。これにより、株主は買収後の統合やパフォーマンスに不満がある場合に、株式をMicrosoftに売却する柔軟性が与えられました。
– 別の例は、2017年にAmazonがWhole Foods Marketを買収した際です。この取引の一環として、Whole Foods Marketの株主に取得条項付株式が付与され、特定のパフォーマンス目標が一定の期間内に達成されない場合、株主は株式をAmazonに売却する権利を行使できました。
– これらの例は、M&A取引における取得条項付株式の戦略的な利用と利点を示しており、株主の懸念を解消し、取引交渉を促進し、取引の確実性と完了を向上させる上での効果を示しています。

取得条項付株式は、M&A取引において株主が自身の株式を一定の価格で売却する権利を持つメカニズムを提供し、買収後のリスクを軽減します。このオプションは、ターゲット企業と買収企業の両方にとって、不確実性に対処し、リスクを緩和し、株主の信頼を醸成するための貴重なツールとして機能します。実際の例は、取引の確実性と完了を向上させる取得条項付株式の戦略的な利用と利点を示し、M&A取引の成功に貢献しています。