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経営コンサルティング

中期経営計画策定支援

中期経営計画

中期経営計画は、企業の経営理念の実現に向けた10年程度の長期ビジョンの下で、より短期である3~5年を中期として実現することを明確にしたものです。具体的なロードマップを示し各年の達成プロセスを売上高や営業利益の目標値、ROEといった数値で明確に設定し、解決する経営課題も具体的施策レベルに落とし込むものが一般的です。

中期経営計画策定に必要な3つのステップ

1.市場環境の変化
新型の感染症によって世界規模で経済活動が停止させられるような非常事態もありました。日本においては大地震が発生するリスクは常に顕在しています。これらのリスク要因も含めて市場環境として想定します。ただし、戦争の勃発といった突発的な要因は想定が難しいともいえ、どの程度リスクとして織り込むかは判断が必要でしょう。しかしながら、原油価格や損害保険料の高騰といった具体的インパクトは、当然に想定しておかなければなりません。その意味合いでは、発生確率の低いイベントを定性的に想定するのは困難とはいえ、外国為替や原油価格は過去10年くらいの最高値と最安値は想定しておかなければなりません。

2.自社のコアコンピタンスの持続的向上
市場変化のボラティリティが拡大した社会(ここでは、気候変動リスクもボラティリティに含むべきでしょう)においても、社会における自社の相対的なポジションを変えずに企業価値を高めるためにはどのような事業を行うべきか?という問いです。例として、米国マイクロソフトはPCのOSとオフィスソフトウェアの売り切りビジネスで世界一の地位を確立しましたが、スマートフォンの登場により個人がネット端末を手の平に持ち歩くようになると、ウィンドウズの高い汎用性による重いOSは反って弱みとなりアップルやグーグルとの競争に敗北しました。そこで、PCとのバンドルやソフトウェアの売り切りを止めて、サブスクリプション型のビジネスモデルへ変革することによってGAFAMの一角として見事に復活したのです。このように、従来の強みにしがみつかず、顧客にとって必要なものを提供するというコアコンピタンスを再定義して確実に実行することが非常に重要なことが分かります。

3.非常に表現の困難な上記の1と2を踏まえて、従業員がビジョンを共有し目標を達成するためのマイルストーンや業績評価といったKPIをどのように設定し、全社的に意識を共有することができるか?が中期経営計画を策定する上での一番の難所です。とかく日本人は目的と手段の峻別を苦手することがあり、議論が長期化するあいだで手段が目的化してしまう議論の脱線が見られるケースがあります。イシューの共有ができることが強い組織を作るうえで最も重要な最初のマイルストーンであり、しっかりと各マイルストーンを辿りながらゴールへ向かって着実に進んでいく絵を描けるかどうかで決まると言っていいでしょう。

形だけの中期経営計画なら止めるのも一法

昨今の高度に複雑さを増し、かつ変化のスピードの速い現代では、3年後の将来を見通すことすら非常に困難になりました。そのため、楽観的なグッドシナリオと悲観的なバッドシナリオとの乖離が広がり、平均的な低成長シナリオを描くケースが多いようです。しかしながら、将来を見通すことが難しいから自社が成長できないというのは企業にとってレゾンデートルを問われる死活的な問題であることを認識しなければなりません。変化していく社会に適合しながら自社の事業ドメインのなかでどのようなポジションを確立し維持していくのか、そのためにリソースに配分や売価の設定をどう動かしていかなければならないかは定性的な面から定量化が可能なはずであり、その定量数値を共有することが投資家のみならず、すべてのステークホルダーに対する責任でもあります。それこそが中期経営計画を策定する意義であり、中途半端な意義でステークホルダーの支持が得られない企業は中計か上場の廃止を検討することも有意義ではないでしょうか。