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M&A(Mergers and Acquisitions)
自己株式
M&A取引における自己株式の最大化
M&Aにおける自己株式のポテンシャルの解放
– 自己株式は、再取得株式とも呼ばれ、発行会社によって買い戻されたが、まだ取り消されていない会社自身の株式です。
– M&A取引では、自己株式は株主価値の向上、取引資金の確保、そして市場での買収企業の地位の強化など、さまざまな方法で活用することができます。
– 自己株式に関する戦略的な考慮と規制上の配慮を理解することは、M&A取引における買い手と売り手の両方にとって重要です。
この自己株式は、株式会社が所有している自己の株式を意味してます。この自己株式のメリットとはいったいなんでしょうか。例えば自己株式の所有比率というものが多ければ、会社を売却する時に買収先から資金が入るので財務をより健全化することができます。さらに、M&Aで企業を買収する時には、現金ではなく株式交換の買収があります。
M&Aにおける自己株式の戦略的利用
– 株主価値の向上:自己株式を買い戻して保有することで、企業は1株当たり利益(EPS)や自己資本利益率(ROE)を向上させる可能性があります。これは財務的な強さや投資家への魅力を示すものです。M&A取引では、自己株式は株式報酬による希釈を相殺するために使用されたり、株の買い戻しプログラムをサポートするために利用され、株主へのリターンを増やすことができます。
– 資金調達の柔軟性:自己株式は、M&A取引の資金調達に貴重な資産として活用されます。株式取引や株式の売却を通じて、取引資金の調達や負債の削減に利用されます。
– 防御策:敵対的な買収や不要な入札の場合、自己株式は防御策として活用されます。株の買い戻しと所有権の集中化により、対象会社は買収の対象として魅力が低下したり、買収コストが増加することで、潜在的な買収者を妨げ、株主価値を維持します。
M&Aや会社売却の際に便利
少し例を挙げて考えてみましょう。例えばJ社の時価総額が100億円、K社の時価総額が5億円だとしましょう。A社は自己株式を発行済み株式総数の1割所有しています。1割というのは、この場合10億円ということになります。そしてその半分である5%でK社の時価総額と同じ成るので、それをK社に譲渡し、K社はJ社に株すべてを譲渡することにより完全子会社となります。このように自己株式は経営者から見るとM&Aや会社売却の際にとても便利なものですが、株主の視点ではメリットだけではありません。なぜなら株価が下落すると自己株式の価値も下がるので、企業資産が減少してしまうからです。つまり株価下落に思わず勢いがついてしまいます。しかし、それを逆手にとって自社株を買い進め、株価の上昇を狙う株主もいます。
事例研究と洞察:過去のM&A取引における自己株式の役割の検証
– 2014年のFacebookによるWhatsAppの買収は、自己株式の戦略的な利用を示した例です。Facebookは、現金と自己株式を含む資金調達により、190億ドルの買収を実現しました。
– 2008年には、Oracle Corporationが自己株式を80億ドル買い戻し、株主価値を向上させ、潜在的な買収企業の試みを阻止しました。
自己株式はM&A取引において重要な役割を果たし、企業にとって資金調達、株主価値の向上、そして防御策の柔軟性を提供します。自己株式を効果的に活用することで、企業は取引構造を最適化し、市場での地位を強化し、M&Aのダイナミックな景観において株主に価値を提供することができます。