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M&A(Mergers and Acquisitions)

種類株式

M&A取引における種類株式の役割

– M&Aにおける種類株式の意義を探る
– M&A取引における種類株式のメカニズムとバリエーション
– M&A取引における種類株式の活用に関する事例と洞察

会社法はその中の107条・108条で種類株式を発行することができると定められています。会社の売却も含まれるこのM&Aにおいては、どんな種類株式が発行されているかによってその必要議決要件が変わるので十分に注意しなくてはいけません(もちろん原則的には309条2項によって組織変更をする時には特別決議となっていますが)。この種類株式を発行することができるとしている趣旨は、一定の範囲と条件のもとで株式の多様化を認め、その資金調達の多様化や支配関係の多様化を行うためです。

M&Aにおける種類株式の意義を探る

– 種類株式、または異なるクラスの株式は、企業内の異なるクラスの株主に異なる権利と特権を付与する株式の分類の一種です。
– M&A取引では、企業は種類株式を利用して、取引プロセス中に特定の株主グループの特定の利益を保護し、適切な統制を維持し、投票権を管理することができます。
– 種類株式の影響とダイナミクスを理解することは、買収企業とターゲット企業の両方にとって重要であり、複雑な取引構造を航行し、株主の利益との一致を確保するための必要条件です。

M&A取引における種類株式のメカニズムとバリエーション

– 種類株式は、クラスA、クラスB、優先株、普通株、および二元的株式構造など、さまざまな形式で存在し、それぞれ異なる権利と投票権を持っています。
– 企業は、投票権、配当権、清算優先権、および取締役会の代表権などの違いを区別するために複数のクラスの株式を発行することがあります。
– 特に、二元的株式構造は、創業者や関係者が戦略的な意思決定を維持しながら、公開株式発行を通じて資金調達を行うことを可能にしました。

M&A取引における種類株式の活用に関する事例と洞察

– 2014年のSnap Inc.によるAlibaba Groupへの買収では、Snapの二元的株式構造が、創業者であるEvan SpiegelとBobby MurphyがAlibabaに企業の大部分の株式を売却しながらも、投票権のコントロールを維持することを可能にしました。
– 一方、2018年のBroadcomによるQualcommの買収の試みでは、Qualcommの二元的株式構造の採用は、Broadcomの敵対的な買収提案に抵抗するための防衛手段として見られました。これにより、Qualcommの経営陣は重要な意思決定のコントロールを維持することができました。
– これらの事例は、種類株式が創業者のコントロールを保護し、敵対的な買収を防止し、M&A取引における株主の利益を保護するために戦略的に使用される方法を示しており、取引交渉における株式構造の微妙なニュアンスを理解することの重要性を強調しています。

種類株式の導入には定款変更が必要

具体的な例としては、譲渡による株式に関して会社の承認が必要な「譲渡制限株式」、株主が会社に対してその株主の取得を請求できる「取得請求権付株式」などがあります。このように色んな種類の株式があることで、様々な株主を会社としても予定することができるのです。ただし、会社設立後に種類株式を導入するには原則として定款の変更が必要になります。また仮に全部を譲渡株式にするのであれば特殊決議が、取得条項付種類株式であれば株主総会の同意というものが必要になってきます。もしM&Aを行う時には、買い手として株式を取得する必要がありますので、買収している会社がどんな株式を発行しているかに注意を払わなくてはいけません。そうしないと必要な議決権を入手できない、という事態になってしまうのです。

種類株式は、M&A取引において企業に柔軟性を提供し、所有権の権利を管理し、意思決定プロセスを制御し、株主の利益を保護する上で重要な役割を果たします。さまざまなメカニズムと構造を通じて、種類株式は企業が複雑な取引ダイナミクスを航行し、戦略的目標と一致し、企業統治の連続性と安定性を確保するのに役立ちます。種類株式の影響と戦略的意味を理解することは、M&A取引に関与するステークホルダーが価値創造を最大化し、リスクを効果的に緩和するための必要不可欠な要素です。